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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。
「…余計諦めきれなくなるじゃないかっ!」
笑顔だった顔が赤く染まり、瞳に涙を溜める。
「…ねぇ、凛さん。俺に1日秋雨さんを貸してくれない?そしたら諦めるから…」
私の頬に壱君の涙がポタッと落ちる。
その真剣な目に私はただ頷いた。
「ありがとう。」
そう、泣き顔のまま笑った壱君は私の上から退いて
私を抱き起す。
「頭冷やしてくるね。」
と部屋から出て行ってしまった。
突然の事に…一人になった私は
手が小さく震えまだ胸が痛いほどに鳴っていた。
…しかし…
その後…
0時が回っても…壱君は帰ってこなかった。
心配になった私は近くを探すためにマンションを出て
近くのコンビニや公園を探したが…彼は見つからなかった。
3時になり…玄関の鍵の施錠が解かれる音がする。
急いで走っていくと…そこには秋雨が立っていた。
「ただいま。凛ちゃん。起きてたの?」
そっと頬に手を置くと、私の体の冷たさに驚いていた。
「…何してたの?」
「壱君が帰ってこないの…」
小さく呟いた私に秋雨の温かな手が頭の上に置かれた。