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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。


「それで…起きてたの?」

コクンと頷くと秋雨は、すこし屈んで私の目線を合わせた。


「花子ね…店に来たよ。
今日あった事も教えてくれた。

花子はもう…地元に帰るらしい。」


「…っ。何で…!」

「俺との思い出は…ちゃんとあげた。」

「何を…?」


秋雨は柔らかく笑い人差し指をそっと
自分の口へと当てた。

「お別れのキスだ。」

「えっ…」

「そっちに目覚めたらどうしようね…?」


秋雨は私の耳元でそう呟いた。
私の目からはポロポロと、涙が溢れた。

壱君の気持ちはきっと普通の恋する女の子達と同じ。
ただ…性別が違うだけ。

誰もが平等にもつ、恋する気持ち。



それから…しばらくして壱君がマンションにきた。
前にも見た…ストレートロングの可愛らしい女の子の格好をして。
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