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せめて夢の中だけでも
第39章 一生俺のもの。
私の口は自然とその苗字に続くであろう名前を伝えた。


「夏輝さん…ですか?」


その名を口にした途端、彼の目は見開いた。


「…どこかで会ったこと、あります?」


「私…しゅ…」

その時、個室の引き戸が開き沙織ちゃんが
ヘラヘラと笑っている。


「あれ?先輩帰りましょーよー!」

「あっ…うん」


引きづられるようにレジへと連れて行かれる。
次に見た彼の表情は笑顔へと戻っていた。


お勘定を済ませると
沙織ちゃんが大きな声で

「秋雨さんのとこ行きましょうよ!」と叫んだ。

目の前の彼は驚いたように…
私を見据えていた。


「君っ!」

声をかけられて一瞬強張った。


何ですか?と少し沙織ちゃんが警戒しているようだった。


「秋雨の事を知っているのか?」


その言葉に沙織ちゃんは笑顔で答えた。
「何言ってるんですか!秋雨さんは先輩の婚約者なんです!!」

酔っている沙織ちゃんはきっと私達の住所まで言い兼ねない勢いだった。
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