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せめて夢の中だけでも
第8章 叶うなら彼の側に

「電話したのか…?」


耳元で呟かれた一言で我に返った。


「あっ…仁さんに電話…」


すると隼人は私から離れ
同じような切ない顔で
「電話してこいよ。」そう笑った。


私は名刺に書いてあった番号に電話をする。



『もしもし』

「あっ。凛です。」

『遅いから電話こないと思ってたよ。
秋雨の店に来れる?』

「えっ…」



一瞬戸惑ったのは紛れもなく…
橘さんの言葉。

近づかないでと言われたばかり。



『ん?都合悪いかな?』

「えっ…イヤ…その…」


私が困っているのが伝わったのか
仁さんは穏やかな口調で言った。



『凛ちゃん。誰かに秋とのこと言われた?』


「えっ?」


『秋、あんなだからモテるからね。
いろんな女の子同士が秋を独占したがってるよ。

店の陰で泣いてる子も見たことある。』


「私…秋雨さんとは親しくないから
そこまでは…」


『でも…秋が今日、頑張ったのは
凛ちゃんのためだよ。


怖いなら…今日が最後でも構わない。

来てやってくれないかな?』




何も言えないでいると…
仁さんが一言私に伝えてきた。


その一言で…私は店に行くことを決めた。
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