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せめて夢の中だけでも
第8章 叶うなら彼の側に
「…凛ちゃん?」


驚いた顔をした仁さんが
心配そうに私の顔を覗き込む。


涙が頬を伝い…
想いとともに溢れてくる。


「あれっ…何で…ごめんなさいっ。」




何も知らない…
何も始まってない。



でも私の心はすでに…

秋雨の笑顔で一杯なの。



…会いたいんだって言ったじゃない…





彼の姿を見ていたいのに
涙で視界が滲んで、彼がぼやけていく。



下を向いて涙を拭いた時だった。




「泣き虫凛ちゃん。」



頭の上で声がした。
顔を上げた私の視界は一瞬にしてまた、滲み出した。



「会いたかったよ。凛ちゃん」



騒音の中で呟かれた言葉は
他の人には聞こえなかった。


仁さんが秋雨の頭をグシャグシャにして
大笑いをする。



他の女性の視線が痛いほど刺さっていた。


それを察してか、秋雨は優しく微笑むと
何も言わずカウンターへと戻ってしまった。
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