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せめて夢の中だけでも
第9章 覚悟を決めて
「…凛ちゃん。俺、今日
無茶苦茶頑張ったんだよ?」

「…はい。」


「人生で一番走ったかも。」


「…はい」


「ねぇ。




いつまで俺の事忘れてるつもり?」




低い、低い彼の声だった。






「…だって…秋雨…さん…」


そこまで言いかけた。
他にも女性がいるんでしょって…

隼人の彼女だって、そうだ。
店の前で…キスしてたのだから。



困ってる私を見かねて仁さんが割って入ってきた。


「秋。凛ちゃん困ってるぞ」


「わかってるよ…仁さん…」


「なら待ってやれよ。」


秋雨は、子供みたいに口を尖らせて
私を見下ろし頭の上に手を乗せた。


「なら…待つ。」


そう言うと私から離れるように
事務室から出て行ってしまった。


秋雨が出て行くと仁さんが私に笑いかけた。


「凛ちゃんどうする?秋と帰らないなら
俺が送って行くよ。」


「一歩…踏み出したら
秋雨さんに近づけますか?」

「今よりかは…秋がわかると思うよ。



でも、きっと秋から離れられなくなるよ?
覚悟…決めれそう?」



…覚悟…

周りのみんなの目はとても優しかった。
秋雨を信頼しているからこそ…
私の背中を押すことが出来るのだろう…



私は強く大きく頷いた。
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