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雨と殻
第3章 五月雨
◇4◇

雲母の身体は小さく、柔らかだった。
強くしなやかな柔らかさではなく、今にも潰れそうな乾いた柔らかさ。
黒は恐ろしくなり、腕をゆるめる。
細い肩をわしづかんだ手をほどき、脆い肌にそっと指を這わせる。
雲母からは言葉も声も出てこない。
黒は思い切って雲母の頬に触れ、顔を上向かせる。
雲母は少し照れた様子で、微笑んで言った。
「……今更、こんなふうに、誰かに、抱かれるとは……ね」
「……嫌、ですか?」
黒の問いに、さらに笑う。
「……まさか。今、死んでも、いいくらいだ」
今度は黒が黙り、若い唇と指が、雲母の首筋を滑る。
「……っふ、ぅ…」
耳許から鎖骨へ。舌がくぼみをなぞり、吐息が肌をくすぐる。
唇が頂きをかすめたと思いきや、指先が後を辿る。
頂きに触れるか触れないかで、円を描く指先。
焦れったいその動きに気を取られる雲母の、細すぎる首筋に、再び唇が這う。
「……ぁ」
不意討ちの熱に、雲母のうなじが反る。
 その頭を抱き寄せ、黒はささやく。
「……まだ生きていたい……と、言ってください」
視界が潤むのを感じながら、雲母は黒の額に唇を寄せた。
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