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旦那様☆ロマンチスト
第9章 ご乱心な奥様

 じっとして動かないみーなのその華奢な肩が、微かに震えていた。


―――泣いているのか?ゴメンよ…みーな。


「やだ…っ!離してっ!」


 じっと動かず人形みたいだった樹菜が、急に俺の腕から逃れようと動き出した。両手を突っ張り、俺の胸を押し返すと、顔を上げみーなに睨みつけられる。その瞳は涙目だ。


「私のこと、もう愛していないくせに。抱きしめたりしないで!」


 そう叫んだみーな。人形のような見知らぬ樹菜から、感情を爆発させ、俺のみーなに戻っていく。泣きそうになって赤くなっている目の淵。俺に向かって叫んでいる様。みーなの感情が俺に向かっているその姿は、凄く美しくて愛おしく目が離せなくなる。


 「日曜日!見たんだから。…敏さんがっ、若い女の子と笑いながら、家ではめったに見せない、素敵な笑顔で笑いながら、楽しそうにしてた!」


 堪えていたみーなの瞳から溢れた涙は、口では言えないでいた俺に対する気持ちなんだろう。その水は、頬を伝うと、ポトリ、ポトリと流れ落ちた。



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