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恋のリサーチ
第1章 突然・・

ところで、この人いったいなんなの?


今度は盗られないように自分の膝の上に手帳を置き、

にらむとまではいかない不機嫌そうな目つきで

男の顔を凝視する。


はっきり言って・・かなりいいオトコだ。

歳は、10歳以上は確実に下、と思われる。

彼も私のことをおねえさん、と呼んだのだから

自分よりは年上、と判断しているに違いない。


それにしてもこのチャラいスーツの着こなし、

堅気の仕事とは思えない・・


ストレスは伝わらなかったのに

想像は彼に伝わったようで、



「オレの事、アヤシイ仕事してるヤツだと思ってんでしょ?」



コツコツとテーブルを指ではじきながら

威圧的な目を向ける彼に、

慌てて首を振った。



「そ!その通り、オレ、ホスト」



スーツの胸ポケットから名刺を取り出し

私の前にホイと投げる。

手に取ってよく見てみる。


クラブ・エデンの園、と店名が書かれ、

その下に源氏名が書いてある。

聖夜、だって!

これ、セイヤって名前はわりと聞くけど

この漢字。

すごい意味ありげじゃない?

でも・・なんかピッタリ、この人に・・

思わず含み笑いを名刺に向けると、



「お、なんか気にいってもらえたみたいじゃん、オレの名前。

 いいだろ?この漢字」



手にしている名刺を親指と人差し指で輪を作りながら

パシッとはじいて、男は顔を近づけてきた。

毛穴まで見えるくらいの至近距離で男の顔を見るのは

久しぶりだ。

恋人と別れて以来、か・・



「聖夜・・オレと過ごす夜は誰にとっても聖夜になるよって、

 そう思ってこの字にしたんだ。

 あ、オレも結構小説家?」



その単純な無邪気さから

人柄は伝わってきた。

ホストなんて特殊でちょっとコワそう、とイメージが先行していたけど

その辺にいる普通の男と

中身はたいして変わらないんだと思った。



最初はこのかかわりを迷惑に感じたけど、

なんの面白味もない私の毎日にちょっとした

刺激をくれたみたいだ。

この際だからもう少し

話をしてみようか・・
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