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恋のリサーチ
第5章 聖夜を・・
246沿いのわりと新しいビルの地下へと続く階段。
降りながら、すでに別世界の様子がうかがわれた。
さらに降りきると、
店の入り口を見ただけで、足が震えてきた。
ものすごく高級そうな門構え。
ドアマンがいる。
私たちの姿を確認したのか、長い取っ手に手をかけている。
一瞬、足が止まった。
「どうしたよ?」
2歩先に進んだ聖夜が振り返る。
「こんな高級なレストラン・・私初めて・・
来たことないの、緊張しちゃう・・」
女子会や友達と行くのは
もっと気軽なイタリアン。
赤いチェックのビニールのテーブルクロスが引いてあるような、
庶民的な店。
今まで付き合った男とさえ、こんな立派な店には
行かなかった。
私も、そして付き合った男たちも、
豪華なものは好まなかった。
だから大げさかもしれないが、どんなふうに食事すればいいのか
わからない怖さで、足がすくんでしまったのだ。
「そんな気負うこたぁねーだろ、
たかがメシ食うだけでさ。
来たことないんならちょうどいいじゃん、初体験で」
聖夜が私の隣に並び、背中を押す。
一歩前に踏み出すと、それを見てドアマンが
扉を開け迎え入れてくれた。
「いらっしゃいませ、山村様」
若いドアマンが名を呼んだ。
山村・・それが
聖夜の本名なんだ・・
ちらっと横顔を見上げると、聖夜と目があった。
私はなにも聞かなかった。
彼もなにも言わなかった。