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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第25章 生と死
 菊乃は小首を傾げている。無理もない、鎌倉生まれの鎌倉育ちである菊乃が惟章を知るはずもなく、また、瑶子は鎌倉方の使用人誰にも惟章の存在を明かしていなかった。頼経という良人がいながら、惟章と恋仲にある以上、不必要に惟章の存在を鎌倉の人間に知らせるのは危険だからである。
「あっ、ああーっ」
 瑶子は悲鳴を上げて、その場にうち伏した。号泣する瑶子を菊乃は茫然と眺めている。菊乃には瑶子の泣き声は意味不明の獣の雄叫びにしか聞こえない。
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