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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第27章 切なすぎる夜

「若い頃には鎌倉にも住んでおりましたよ。ここは良きところだ。眺めも良いし、何より海が近い。俺は鎌倉で女房と出逢って所帯を持ちましてね。新婚時代を過ごしたのがここでした。だから、一年ほど前にここに似たような家をまた建てたんです。数年前に、その長年連れ添った女房にも先立たれました。二人の娘たちもとうに嫁に出して、人並に孫にも恵まれた、お陰で安気な余生を送らせて貰っています。そういうわけで、たまに思い出して懐かしくなると、ここに帰ってくるんですよ」

