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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第29章 第五話 【今宵の桜~義高と大姫のものがたり~】
今宵、何度目のため息だろうか。大姫もまた床の中で人知れず吐息をついていた。この世に生まれ落ちてから十九年、それを長いと見るか短いと感じるかは判らない。けれど、我が身の人生は考えれば、涙とため息だけで出来ていたようなものだと今更ながらに思う大姫だった。
どれだけ恋しく思えども、我が君はもうこの世にはおられない。そう、大姫がこの世で良人と呼ぶひとはただ一人、義高だけなのだ。