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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第32章 睡蓮の庭
 つまり、父頼経と執権経時の間は上手くいっていない。父は温厚な人だから、表立って経時と敵対することはないけれど、将軍と執権の間に常によそよそしく緊迫した空気が流れているのは誰もが感じ取っていた。
 だが、幼い千手丸にとっては大人たちの思惑も遠い出来事の話にすぎなかった。
 そこで、また無邪気な声が千手丸の物想いを破る。
「千手の君、何をぼんやりとしておいでなのですか?」
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