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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第32章 睡蓮の庭

広大な池の周囲には濃紫(こむらさき)や純白の菖蒲(あやめ)が群れ咲き、薄桃色の睡蓮が水面に浮かんでいた。少女の名は千草。千手丸の乳母菊乃の娘だから、彼とは乳姉弟の間柄だ。菊乃の良人河越康英(やすひで)は初代頼朝が伊豆の流人時代からお側去らずで仕えた重臣河越恒正の末裔であった。
将軍世嗣を養い君に持つということで、一時は衰退していた河越家はまた勢いを取り返し、現在は北条得宗家と張り合えるほどの力を持っている。当然ながら、幕府内での発言権も大きい。
将軍世嗣を養い君に持つということで、一時は衰退していた河越家はまた勢いを取り返し、現在は北条得宗家と張り合えるほどの力を持っている。当然ながら、幕府内での発言権も大きい。

