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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第32章 睡蓮の庭
 千手丸の口から無意識の中に呟きが洩れた。
「雨が降らずば、父上が余計に困ったことになられる。執権はそうでなくとも、父上の弱みを握ろうと必死なのだから」
 千草がにっこりと笑った。
「大丈夫です。我が父河越康英はどのようなことがあっても、御所さまのお味方です」
「ああ」
 千手丸は笑顔で頷いた。と、千草が最良の策を思いついたとでも言いたげに叫んだ。
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