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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第33章 浜辺の約束
 嫌われてしまったかと慌てて見れば、言葉とは裏腹に頼嗣は笑っている。ホッとして、千草も微笑み返した。
「そんなに櫛を気に入ったのか。他の男から贈られたものでそのように心あらずになるとは、許し難い。さすれば、私はそなたには花を贈るとしよう」
 頼嗣が示した前方には、花売りの老婆が大きな籠を背負って歩いていた。こちらに向かってうつむき加減に歩いてくる老婆に頼嗣は気軽に声をかけた。
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