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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第33章 浜辺の約束
 老婆が眼を潤ませた。
「ありがたいことでございます。お優しい姫さまに御仏のご加護がありますように」
 老婆は小さな皺だらけの手を合わせ、千草を仏を拝むように伏し拝んだ。
 結局、その日は幸か不幸か殆ど売れたとのことで、籠に残っていたのは紫色の菫だけだった。
 老婆は二人に幾度も深々と頭を下げて人波に紛れた。
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