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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第34章 切なる願い~父と息子~
更に慎重に言葉を吟味しつつ続ける。
「父上が竹御所さまにめぐり逢われたは我が母上を迎えられるはるか昔のこと、それは致し方のないことでございましょう」
頼経は淡く微笑した。
「私は十六で妻子を一度に失った。先御台を失った直後はまさに、自分一人が暗闇に放り出されたような心もちであったよ。これから自分は永遠にこの深い闇に囚われたまま生きてゆかなければならないのかと考えただけで、孤独に気が狂いそうになった」