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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第5章 源氏の一族
もっとも、時繁と暮らすようになって以来、文字どおり漁師の女房だったから、暮らしに合った質素な小袖しか買えなかった。屋敷を出た時、身に纏っていた小袖は上物だったため、古着屋で売ることも考えたが、そこからまた河越の父に居場所を知られては困ると止めた。
用心には用心を重ね、時繁は目抜き通りには行かず、あまり人通りのない道を選んで歩いた。それでも、道の両脇には露店が居並び、物売りのかしましい声が聞こえている。