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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第34章 切なる願い~父と息子~
頼経はもう何も言うことはなかった。
大御所の庭は静けさの底に沈んでいる。女人の眉を思わせる繊細な眉月が清かな光を地上に投げかけ、庭に群れ咲く花をひっそりとほの白く照らし出していた。
まだ冷たさの残る夜気にほんのりと混じっているこの甘い香りは水仙か、梅の花か。
頼経にふいに抱き上げられ、瑶子が愕いて小さな悲鳴を上げた。
「殿、びっくり致します」
「この甘い香りは、そなたの身体から香ってくるのかな?」