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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第36章 春雪
 それでも、頼嗣はまだ着物を着ようとしない。千草も裸の頼嗣に一糸纏わぬ姿で寄りかかった。パチパチと火の粉が爆ぜ、焔が燃えている。
 その焔を見つめながら、千草は静かな声音で言った。
「待ちましょう。大御所さまや執権どのが認めて下さるまで。時期は必ず来ます」
 頼嗣がハッとしたように身を起こした。
「何を言う。このようなことになったのだ、私は一日も早く、そなたと婚儀を挙げたい」
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