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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第37章 浜辺にて(二)
 千草は空を仰いだ。
 祝言が終わって御所に帰る頼嗣を見送ったのが今生の別れになるとはよもや想像だにしなかった。
 何度も振り返っていたあの男の別れ際の表情までもが今もはっきりと思い出せる。その頼嗣も京都に追放された三年後、赤痢で亡くなったと聞く。まだ十七歳の若さだった。更には父頼経までもがそのひと月前に同じ赤痢で儚くなった。
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