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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第5章 源氏の一族
「何か大切なものなのですね? 私には刀のようにお見受けしましたけれど」
つい訊かずにはいられなかった。普段は穏やかな海のような男を瞬時にあれほど惑乱させるものとは何なのだろうか、知りたいという欲求には勝てなかった。
言った後で、また機嫌を悪くするかと思いきや、彼は小首を傾げて意外にも教えてくれた。
「流石は河越恒正どのの娘、武家の姫だけはある。やはり、バレてしまったか」
それから彼は一瞬だけ遠い眼になった。