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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第2章 ~海辺にて~
~海辺にて~
俺はいつも海を見ていた。そう、こうやって片手のひらを耳に当て、じっと聞き入ると、かすかに海鳴りの音が押し寄せてくる。寄せては返す白い波頭(なみがしら)を俺は海鳴りに耳を傾けながら、飽きることもなく眺めている。
永遠に途切れることのない波は、人の生にも似ている。誰かが今日、亡くなっても、入れ替わるように翌日には新しい生命がこの世に生まれている。限りなく続いてゆく人の営みに俺は海を重ねてみる。