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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第5章 源氏の一族
 浜辺の小屋までの道のりをどうやって帰ったのかも判らなかった。それから数日というもの、楓は沈み切っていた。そのことに敏感な時繁が気付かぬはずがない。
 五日目の夜、夕餉がいつもより早くに終わった後、楓は仕立物の続きをしていた。むろん、時繁の直垂を縫っているのである。
「―えで、楓」
 焦れたような声に、楓は弾かれたように顔を上げた。
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