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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第5章 源氏の一族
楓は大粒の涙を零しながら、烈しく首を振った。
「時繁さまは何故、そのような残酷なことを平然とおっしゃるのです? 私は河越の父も心配です。さりながら、時繁さまのお側を離れたくもない。時繁さまも今は父と同じくらい大切な方だから」
時繁が淋しげに微笑む。時折、彼の美麗な顔にちらつく翳りがいっそう濃くなった。
「だが、親父どのが病に倒れたと知った今、俺はお前をここに縛り付けておくことはできない。楓、俺も辛いんだぞ」