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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第6章 復讐のとき
楓とさつきがそのような会話を交わしている頃、別室では恒正と時繁が対峙していた。
恒正は鼻下にたくわえた髭を無意識に撫でつつ、下座で手をつかえる若者を見つめていた。
―この男、ただ者ではない。
恒正は父祖の代から源氏に仕えてきた。頼朝には十代の頃から仕え、その流人時代も影のように寄り添ってきたのだ。いわば源氏の御家人の中でも筆頭格である。当然、頼朝の傍にあって、様々な労苦も重ね、人を見る眼も長けている。