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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第6章 復讐のとき

その後、まず頼朝が退出した後、時繁らも辞した。だが、楓は確かに聞いたのである。頼朝が家臣を従えて出てゆく間際、隣の良人が聞き取れぬほどの低声で囁いたのを。
「そして、貴様は平氏を滅ぼした弟すら殺した。我が血を分けた弟を誅するとはいかにも畜生にももとる非道な行いではないか」
恐らく頼朝はむろん、付き従う家臣にも聞こえはしなかっただろう。傍にいた楓でさえ、空耳かと思ったほどなのだ。しかし、楓にしてみれば、別の意味でその呟きが幻聴であれば良いと願わずにはいられなかった。
「そして、貴様は平氏を滅ぼした弟すら殺した。我が血を分けた弟を誅するとはいかにも畜生にももとる非道な行いではないか」
恐らく頼朝はむろん、付き従う家臣にも聞こえはしなかっただろう。傍にいた楓でさえ、空耳かと思ったほどなのだ。しかし、楓にしてみれば、別の意味でその呟きが幻聴であれば良いと願わずにはいられなかった。

