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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第7章 疑惑
若夫婦の寝所前、小さな庭には今を盛りと紅椿が咲き誇っていた。突如として、手前の紅い花がポトリと落ちた。椿ほど色のないとかく沈みがちな冬景色を艶やかに彩る花を知らないが、花冠ごとすっぽりと落花するその様が〝首が落ちる〟に通じ不吉だと見なされることも多いのだ。
何かしら厭な予感がし、楓は何気なく空を仰ぎ、慄然とした。先ほどまで蒼く神秘的な光を放っていた月が深紅に染まっていた。紅い月、まさにそんな呼び名がふさわしい。