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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
 しばらく男はポカンとしていたが、やがて腹を抱えて笑い出した。今度の笑いはなかなか止まらず、しまいには涙眼になってまで身体を震わせて笑っている。
「あなたって本当に失礼な人ね」
 楓が踵を返そうとすると、ふいに手が掴まれた。
「おい、待てよ」
 楓は首だけねじ曲げて振り向いた。
「この手を放しなさい」
 凜とした声音で命じるのに、男が言った。
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