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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
康正の父、つまり千種の祖父恒興は元々次男で、家名を継ぐ立場にはなかった。それが何故、急に当主となるに至ったか。その理由は兄に当たる前(さきの)当主恒正が俄に出家・隠遁してしまったからだ。
恒正は初代将軍頼朝が流人時代から傍近く仕え、兄弟同然の間柄でもあった。従って、頼朝が将軍となってからも、重臣として幕府内で重きをなしてきたのである。ところが、頼朝直々に取り持った北条家との縁組みを一人娘楓が嫌い、どこの馬の骨とも知れぬ漁師の若者と駆け落ちしてしまった。
恒正は初代将軍頼朝が流人時代から傍近く仕え、兄弟同然の間柄でもあった。従って、頼朝が将軍となってからも、重臣として幕府内で重きをなしてきたのである。ところが、頼朝直々に取り持った北条家との縁組みを一人娘楓が嫌い、どこの馬の骨とも知れぬ漁師の若者と駆け落ちしてしまった。