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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
 恒正が出家したのは、生涯忠誠を誓った主君頼朝が亡くなった後のことだ。頼朝の死後、まもなく、娘の楓がその良人、つまり河越家の婿養子となったばかりの時繁という男と逐電した。逐電の理由は定かではないが、恒正の突然の遁世は、後を託す娘夫婦の失踪と頼朝の死という身内の相次ぐ不幸によるものであろうと囁かれていた。
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