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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
 千種は、逼塞した一御家人の娘として、慎ましく育った。それでも、在りし日の河越家の隆盛を知る父康正は
―我らは初代の鎌倉どのの第一の臣といわれた家柄ぞ。その河越氏の者たる誇りを常に忘れてはならぬ。
 というのが口癖であった。だからこそ、千種も己れを厳しく律してきたのだ。
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