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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第10章 雨の朝(あした)
政子は再度、千種の手を両手で包み込み、押し頂いた。これには愕き、手を引き抜こうとしたが、政子の力は齢(よわい)七十過ぎの女人とは信じられないほどに強かった。
「紫は我々の最後の希望の星であった。あの姫の細い肩に、この幕府の存亡がかかっていたと申しても過言ではない。頼朝さまの血を引く姫を新将軍に娶せる。それは頼経どのがわずかに一歳でここに来たときから、既に決まっていたことなのじゃ。当時、紫は十七歳、あの娘にふさわしき年格好の相手との縁組みもあまたあったに、すべて断ったのも、すべてはこの婚姻のため。
「紫は我々の最後の希望の星であった。あの姫の細い肩に、この幕府の存亡がかかっていたと申しても過言ではない。頼朝さまの血を引く姫を新将軍に娶せる。それは頼経どのがわずかに一歳でここに来たときから、既に決まっていたことなのじゃ。当時、紫は十七歳、あの娘にふさわしき年格好の相手との縁組みもあまたあったに、すべて断ったのも、すべてはこの婚姻のため。