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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第11章 見知らぬ花婿
「紫」
 鞠子とそれらしく改名したけれど、周囲の人々は皆、千種を幼名で呼ぶ。千種にすれば、どちらの名前も所詮は他人のもので、借り物にすぎないから、特に拘りはない。
 何度呼びかけても応えない千種に焦れたのか、政子がその肩に手をかけた。その拍子に振り向いた千種の瞳には大粒の涙が宿っていた。
「―」
 政子が胸をつかれたように息を呑んだ。
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