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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第11章 見知らぬ花婿
 目抜き通りを抜け、人気が殆どなくなった細道に差し掛かった頃、千種は漸く大男を呼び止めた。
「ちょっと、そこのお兄さん」
 何度目かに漸く大男が立ち止まった。いかにも面倒臭そうに振り向くのに、相手が美人と知るや、現金なもので、眼の色が変わる。その眼に下卑た光が宿るのも無視して、千種は腕組みをした。
「お兄さん、さっき、隣の人から財布を擦ったでしょ」
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