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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第11章 見知らぬ花婿
 と、商人が思い出したように言った。
「失礼ながら、お名前とお住まいをお訊ねしても?」
「え―」
 その問いには千種も返答に窮した。
 そこに割り入ったのは例の若者だった。
「そなた、無礼であろう。この娘は私の許婚者である。他人の女に手を出すとは許せぬ」
「さ、さようでございましたか」
 商人は仰天し、若者に頭を下げた。
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