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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第2章 ~海辺にて~
俺は祖母に言われるとおり、小さな手のひらを合わせて伊勢神宮がある西方を伏し拝んだ。
波の下にも真に都があるのですか? 俺が訊ね返そうとする前に、俺は祖母に抱かれて冷たい早春の海に沈んだのだ。それから先はまさに地獄だった。
水に飛び込んだときの苦しさは今でも俺を夜半、目覚めさせ悪夢を見させる。海中に身を投じた俺たちはすぐに苦悶に喘ぐことになったが、それでも祖母は気丈にも俺を抱きしめ離すまいとしていた。