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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第3章 父と娘
「それでは、これで失礼します」
 何故かその場から立ち去りがたくて、楓はその場に立ち尽くしていた。
「今は帰ることが大切だ」
 優しい声音とともに大きな手が背中をそっと押した。それがきっかけとなったかのように、重たい身体が呪縛から解けたように動き出した。
 それでもなお、心を残して、ゆっくりと歩き出した楓の背中に男の声が追いかけてきた。
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