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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第14章 身代わり姫の告白
「千種」
 もう一度、呼ばれた瞬間、心が震えた。だって、あまりにも幸せで。愛する男にとうとう本当の名前を呼んで貰えたから。
 頼経の声にわずかに狼狽が混じった。
「そなた、泣いているのか?」
 その言葉で、泣いていることに自分でも初めて気づいた。
「ああ、また泣く! そなたが泣いたら、私の方が困るのだと言っておるだろうに。何度言い聞かせても判らぬヤツだ」
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