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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第15章 海に降る雪~終章~
頼経はしばらくの間、痛みを堪えるような表情で浜辺に佇んでいたが、想いを振り切るかのように、首を振った。
眼を開いた時、既に波間を漂っていた千種の髪も菊の花も見えなくなっていた。千種が好きだった小手毬の花をせめて手向けにしてやりたいと思ったが、生憎、今の季節には小手毬の花はどこにも見当たらない。
純白の花を愛した妻は稀に見る心の清らかな女だった。だから、小手毬の代わりに白の菊花を持ってきたのだった。