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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第19章 再会

女院もまた背後を振り返った。それは壇ノ浦で死んだはずの幼い帝が最後まで身にまとっていた御衣だった。徳子は亡き御子の形見となった御衣を法具の幡に自ら仕立て直し本堂に飾ったのだ。幼くして海に散った我が子へのせめてもの供養になれば、その御心を鎮めることができればと願ってのことだ。
今、その死んだはずの帝が成長してここにいる。時繁がどのような想いでそれを見つめているか、その心根はたとえ生みの母である女院ですら、うかがい知ることはできない複雑なものであるに違いなかった。
今、その死んだはずの帝が成長してここにいる。時繁がどのような想いでそれを見つめているか、その心根はたとえ生みの母である女院ですら、うかがい知ることはできない複雑なものであるに違いなかった。

