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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第22章 涙の旅立ち
 だが、それも叶わぬことだ。瑶子はこれから別の男に嫁す身なのだ。今ここで祝言を間近に控えた彼女を穢すことは単に瑶子の名誉を傷つけるだけでなく、幕府に対峙する京方の体面をも著しく損なうことになる。
 瑶子がしゃくり上げながら言った。
「ここでこのまま死にたい。惟章と離れるくらいなら」
 惟章は瑶子の髪を愛おしげに撫で、彼女が泣き止むまで辛抱強く待ち、泣き止んだ彼女と眼線を合わせた。
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