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笑うことしか出来ない私へ
第3章 優しいフリ
ぼーっとしていた。
多分、ものの数分だ。
――――――…ガシッ!
「っ…!!!」
物音にも気付かず、手首を掴まれた。
驚いて声を出す間もなかったが、
振り向くことは出来た。
そこに立っていたのは、
見知らぬ男性だった。
「…っ誰?!何!?」
驚いて咄嗟に聞いてしまった。
男も驚いたようで少し手の力が緩んだのが分かった。
「さっき、」
「?」
「死のうとしてた?」
「…っ」
さっき、って海?
ドストレートに訪ねられて
返答に困った。
確かにその通りだ。
でも、素直に言う勇気はなかった。
多分それは自分が間違っていると認める事になりそうだったから。
きっと怒られると思ったから。
でも、それは私の想像でしかなかった。
「俺の勘でだけどあんた殺しても死ななそうだから無駄だと思うけど。」
遠回しに止めているのか?
「私、人間だよ。」
多分、みんなと同じで殺されたら死ぬと思う。
後の言葉は飲み込んだ。
男は一瞬キョトンとして
ははっと笑うと
「あっそ。」
ただそれだけ言うと手を離して
入り口へ向かった。
私は少し走って男を追い掛けた。
そして、さっき男がしたのと同じように男の手首を掴む。両手で。