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笑うことしか出来ない私へ
第5章 ぬくもり
店の中へ入るとこれまたおしゃれで
店員の気品も漂っていて
素敵なお店だ。
席へ案内されると
人目に付きにくい落ち着いた空間で
なんだか安心した。
「お客様、メニューでございます。
こちら、本日のオススメです。
丑嶋様はいつもので宜しいですか?」
「あぁ。それで。
お前は何にすんの?」
?
こうたは常連さんなのかな?
私は店員とこうたの会話を聞きながらメニューを見る。
どれもこれも美味しそうで迷うな~
こうたのいつものは何なんだろう?
「えっと、じゃあ、これ。」
私はメニューを指差し
店員へ伝える。
「かしこまりました。」
あ、指差しは行儀悪かった…
今さら後悔しても遅いけど…
こうたをチラリと見ると
何も気にしていないようだった。
良かった…
胸を撫で下ろす。
少しの沈黙があり、
今日は私から破った。
「こうたはここの常連さんなの?」
「昔よく来てたんだよ。
隠れ家的な雰囲気が好きで。
味ももちろん美味しいけど。」
「そうなんだ…
うしじまこうたって言うんだね。」
「え?あ、あぁ。そうだよ。」
「さっき店員さんが言ってたから。」
「よく聞いてんなお前」
苦笑い気味に私を見るその目が
私は結構好き。
「いちこの名字は?」
「私は、しいなって言うの。」
「しいなって椎名林檎の?」
「そうだよ。」
「へぇ~。いちこの字は?」
「数字の一に子供の子だよ…。」
「なるほどな~
いい漢字じゃん」
「そう?ありがとう。」
どうせ嘘だと思いながら
褒められたことが嬉しかった。
そうこう話している内に
料理が運ばれて来て
楽しい時間は過ぎて行く。