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片想いの行方 2
第13章 5分の差
ヒカルがなぜか沈黙するので、コーヒーを飲み干すと
フロアから出てきた後輩が、俺を見つけて近付いてきた。
「鈴木さん、すみません……って電話中でしたか」
「いいよ、なに?」
「デスクの上で会社携帯鳴ってて。
多分シアトルから資金の件かと……」
「あぁ、すぐ行く」
携帯を耳にあてたまま立ち上がり、空になったカップを捨てる。
そういや、そもそも何のメールだったんだ?
「ヒカル、それで用件は……」
『蓮、今会社にいるの?』
俺の言葉を遮ってヒカルが聞いてきた。
その後ろから、風の音と車のクラクションが聞こえる。
「あぁ、そうだよ」
『5分だけ、時間くれない?』
「え?」
『仕事まだかかるでしょ?
ほんの少しでいいから』
大きく深呼吸をしたヒカルは、少し震えたような声で続けた。
『……今、あんたの本社ビルの目の前にいるんだ。
蓮に……伝えたいことがあるの』