この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
片想いの行方 2
第14章 行かないで
RRRRRRRR………
エントランスを抜けて、ビルの外に出たタイミングで
もう一度携帯が鳴った。
歩きながら着信画面を見て……その名前を確認すると
ゆっくりと、耳へと運ぶ。
『俺の携帯、お前の着歴で埋まったぞ』
「…………」
『何の為の留守電だと思ってるんだ。
用件残せよ』
………いつもと変わらない、嫌味を込めた低い声。
やっと繋がったその電話の向こうから、同じく外であることを示す雑音が聞こえる。
『ヒメ? 聞いてるのか?』
タクシーが流れる大通りの手前で、俺は足を止めた。
「………蓮」
『お前のイタ電の5分後に、ヒカルから連絡があったんだ。
話があるからって会社の下まで来てて。
だけど今、降りてみたら……』
「ヒカルは悪くないんだ」
3日前、俺と美和を交互に見つめて
嬉しそうに笑ったヒカルの顔が浮かんでくる。
『………え?』
「憧れる相手は、姉貴じゃない。
だから、自覚が無いまま似ちまうんだよ」