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例えば、こんな...
第6章 バレンタイン企画
少し歩いて恐る恐る見上げられ、ドクンと心臓が存在を主張する。
「あの、た、田中さん。田中さんだけでも良いですか?」

田中さん……ね

「良いよ。じゃあ今度一緒に来た時で良いから紹介して?」
首を傾げて見せると真純は頬を赤く染めて頷いた。キュッと手を握ると小さく身体を震わせて
「……はい」

あー……
ホント、参る

程なくマンションに着いてエントランスを抜けた。エレベーターに乗り込んで真純を抱き寄せる。
「ぁ……」
少しくらい身動がれても、腕の中に収まる小さな身体。丸い頭に口付けて、華奢な背中を手が滑り降りる。
「や、さいと……さん」
裾をたくし上げようとして拒否された。
そんな仕草まで可愛くて、奮い立つ。強引にスルのはココでじゃない。
「ん、ごめん」
一言謝って髪に口元を埋めた。
甘い香りが強くなる……
香水類は何も着けていないと言っていた。色を纏うと増す香り。
自然口角が上がるというもの。

ポーンと軽い音がして、感じる僅かな浮上感。エレベーターが止まった。
真純の腰に腕を回したまま廊下を歩く。こんな時はドアのダブルロックが煩わしい。
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