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例えば、こんな...
第6章 バレンタイン企画
玄関に入り、後ろ手で鍵を掛ける。照明を点ける間も惜しんで、靴を脱ぐ時間も与えず鞄を落とさせ、そのまま壁に縫い止める。顎を掬い上げ、唇に食い付いて
「やっ……んっ」
歯列をなぞり、緩んだ交合からさらに奥へ舌を滑らせる。口蓋を舐め上げ、逃げ惑う舌を絡め取る。
「んっ、んんっ!」
押さえ付けた手首を壁から剥がし、首に回させる。壁を利用して真純の身体を持ち上げ、靴を脱がせて
「やっ……まっ、あっ」
そのまま抱えあげて寝室に……

無理だな。
そんな事したら怖がられる。

一瞬過った妄想をなかったことにして普通に扉を閉めた。鍵を掛け、真純のコートを受け取って先に上がらせた。入ってすぐのクロークにソレを掛けていると
「わぁ……」
リビングから真純の驚いた声がする。その少し甘い響きに口元が緩んだ。
リビングの扉を開けて
「驚いた?」
テーブルを見つめる真純に声を掛けた。上体ごと振り返って頷く、真純の笑顔にこっちまで嬉しくなる。
「素敵です。あの、これ……」
「真純に、ハッピーバレンタイン」
テーブルには小振りなアレンジフラワーとお皿とデザートのカラトリー、シャンパングラスをそれぞれセットしてあった。
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